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科学技術が高度に発展した現代において,歴史・文化を踏まえた上で都市・地域を再生し,人間生活や社会機能の高度化・複雑化に対応でき,自然環境と調和できる建築・都市を実現するために,人間としての幅広い教養,建築学に係わる総合的な基礎能力及び応用能力を培い,広く社会の発展に貢献できる建築設計者・建築技術者の養成を目的とする。 |
・建築は未来をつくる
近年、人工知能(AI)を活用した建築・都市設計の手法が提案されている。AI技術は、過去の膨大なデータを基に判断を行うが、リアルタイムで進行する社会問題や環境問題を踏まえ、新たな建築の在り方を創造することは、人間にしかできない重要な役割である。また、建築学は経験の蓄積が重要な学問であり、長い歴史を持つ。近代以降、社会の仕組みは整備されてきたが、今日ではその行き詰まりも指摘され、新しい産業、働き方、暮らし方、生き方が模索されている。地球環境問題に対して建築の観点から責任を果たし、持続可能な未来を築いていくことが求められる。
・「よい建築」とは何かを考える
「よい建築とは何か?」この問いに明確な答えを出すことは容易ではない。なぜなら、建築の評価は人によって異なり、状況や用途、目的によっても変化するからである。最大公約数的な建築が良い建築であるのか、それとも唯一無二の建築こそが理想なのか、様々な議論が存在する。しかし、現実には、その場所にはただ一つの建築しか建てることができない。このような建築の奥深い世界を旅するように楽しみながら学んでほしい。
創設時、まだ近代化の途上にあった日本において、本学の蔵田周忠教授は「新しい建築とは何か?」という課題に挑み、近代建築の発祥地であるドイツのバウハウスで学び、その教育思想を本学に取り入れた。さらに、三木韶教授は、建築音響学の専門家としてだけでなく、建築計画、照明、製図など幅広い分野の教育に携わった。このように、本学科は建築工学分野の教育研究にも特徴があり、これまで多彩な人材を輩出してきた。
その後、広瀬鎌二教授などの実践的な教育が加わり、時代の変化に即した新しい教育環境が形成されてきた。本学科は常に時代の最先端を取り入れながら、独自の教育方針を築いている。
本学科では、工学的要素と芸術的要素の双方から総合的に「建築学」を捉え、建築に関する基礎知識の習得と、各分野における高度な専門知識および技術の修得を目的としたカリキュラムを構成している。幅広い建築学を四つの領域に分け、系統的かつ効率的に学習できるよう設計し、総合的・包括的に建築を学ぶことが可能である。
カリキュラムは、1年次に工学全般の基礎学力を養い、2年次には建築学の基礎的な専門科目を学ぶ。3年次後期以降は、各自の進路や適性に応じて専門性を深める構成となっている。必修科目には、建築学を学ぶ上で最低限必要な内容を盛り込んでいるが、意匠設計に関心がある者であっても、建築構造力学、建築環境工学、建築材料学、建築構法などの工学分野の知識は不可欠である。これらの基礎知識は、一級建築士の資格取得においても必須となる。
各授業科目の「学習・教育目標」を記した表を十分に理解し、履修に取り組むことが求められる。